当記事ではアメリカで稽流流産手術を受けた際の体験談を掲載しています。
なぜ流産について記事を書こうと思ったか
妊娠12週、安定期まであと1ヶ月とカウントされる日。私は稽留流産の手術を受けました。
1年半待ち望んだ末の妊娠だっただけに、
流産の宣告をうけた日は悲しさと喪失感で1日泣き腫らしました。
でもどのように赤ちゃんを取り出してあげるかを選択しないといけない。
情報収集するも、専門用語を多く含む英語を読むのは、その日の私には無理でした。
もっと日本語で情報は無いのか、純粋にそう思いまいました。
アメリカという異国の地で
孤独と悲しさと闘いながらも、最善を尽くしたいともがいている方に。
少しでも有益な情報を残せたらと思い、この記事を書いています。
時系列①【流産の宣告日】
妊娠11週の最終日、2回目の妊婦健診に行きました。
前回の受診で心拍は見えていたので、軽い足取りで向かったOB-GYN(産婦人科)。
「今日の採血で10日後には性別か分かるわよ〜」と先生もにこにこ話してくれました。
その後簡単にエコーだけしましょうと言われて内診台へ。
しかし、腹部エコー(abdominal ultrasound)では赤ちゃんがよく見えず、
経腟エコー(Transvaginal ultrasound)に切替。
そこで赤ちゃんの心臓が止まっていることがわかりました。
先生はゆっくりとはっきりした声で「残念だけど赤ちゃんはすでに亡くなっている。時間をあげるからパートナーに連絡をするように。」と仰いました。
仕事中だった夫に電話で状況を説明。
長男のデイケアのお迎えの時間が迫っていたのでそちらを任せました。
しばらくすると先生が入ってきて今後の説明を受けました。
赤ちゃんと胎嚢(sac)はあなたの子宮の中に今もあります。
それを取り出してあげる必要があるの。その選択肢を3つ挙げるからよく聞いて考えてほしい。
選択の決断は今じゃなくて、パートナーと話し合って一晩休んだ後でいい。
と言われました。
選択肢は3つ
①待機療法
胎児が胎嚢と一緒に自然に出てくるのを待つ方法。
稽留流産の場合、2週間で75〜90%は出血と共に自然に出てきてくれるそうです。
(参照:日本産婦人科学会HP)
ただし、いつでてくるか、どの程度の出血になるかは分からないと説明をうけました。
②薬物療法
私の病院ではミソプロストールというお薬をお口から服用します。
(正確には歯茎とほっぺの間で溶かして口腔内から吸収させる)
そうすることで、子宮を収縮させて胎児と胎嚢を外に排出させる方法をとっていました。
服薬後数時間〜翌日にかけて、生理痛より少し重い痛みと出血ととも
に外に出てきてくれるよと説明を受けました。
不十分な場合は追加の薬や手術が必要な場合もあるとも言われました。
③手術
吸引掻爬術(suction dilation and curettage)のこと。
物理的に取り出してあげる方法です。
日帰りで処置を受けられると説明を受けました。
ただし、静脈麻酔下での手術なのでリスクはあります。
感染や子宮穿刺の可能性も低いけどゼロではないと伝えられました。
私の場合
私の場合は赤ちゃんが亡くなってから時間が経っている可能性が高かったです。
(この段階で胎児のサイズは7週程度で止まっていました)
このため先生には②か③をおすすめすると言われました。
2歳児の息子をお世話しながらいつ出血するのか待つのは難しく、
出てきた赤ちゃんを見る勇気がなかったので、私は③の手術を選びました。
夫と話しあった上で、その日のうちに主治医に自分の選択を伝えました。
時系列②【手術前日】
流産の宣告を受けた次の日。
「手術の日が明日に決まったわよ」と主治医から連絡がきました。
この日は電話で来院時間、持ち物、服装などの連絡を受けました。
息子のデイケアの延長保育や準備などを慌ただしくこなしました。
病院のPAさん(Physician Assistant)から連絡が何度もありました。
手術前日の夜12時以降は絶飲絶食し、
ビタミンなどのサプリは飲まないことと口酸っぱく言われました。
人生初めての手術前夜でしたが、不思議と安心して眠ることができました。
時系列③【手術当日】
AM 5:30 <受付>
まだ朝暗い中起床。レギンスに薄手のセーターにスニーカーというラフな格好で病院に到着。
セキュリティの係員にIDを見せて入館許可書のシールをもらい入館。
同伴者は家族待合室で待たねばならず、処置室には入れませんでした。
AM 5:30 <半個室での対応>
ナースステーションから見える半個室に通されました。
個人情報の登録や輸血の同意書などにサイン。
ここでスケジュールの概要を教えてもらい、安心したのを覚えています。
採血1本とルートを取ってもらいました。
また、このときに液体の胃薬を飲むように言われました。
これは麻酔下では胃の噴門部が緩み胃の中身が逆流するのを防ぐ役割があるそうです。
AM 7:00<主治医による問診>
産婦人科の先生と麻酔の先生による問診があり、既往歴の再確認などが行われました。
術後は先生とは話せないから、質問があれば今してねと言われました。
「胎児の組織は検査にだすのか?」と聞きました。
回答は「アメリカでは患者のよほどの希望が無い限り胎児検査はしない。」とのこと。
この段階で複数人の医療従事者の方に
「この手術をする目的を自分の言葉で説明してください」
と3回ほど言われ、最初は少し怯みました。
“I had a miscarriage and need to have the baby removed from uterus.
(流産したため、赤ちゃんを子宮から取り出してもらう必要があります)”
のようなことを毎回答えていました。
後に医師の友人から
これは誤った手術をしないために必要な質問であると教えてもらいました。
AM 7:20<手術室へ移動>
手術室へ歩いて移動。
「(ルート確保のための)輸液をテディイベアのようにやさしく抱えて歩いてね」
とアドバイスをもらい、思わず笑いがこぼれました。
朝一番の時間帯。手術室へ向かう医療従事者や患者さんの大名行列ができていました。
手術室に入るとクラシック音楽がかかっていました。
オペナースさんたちと挨拶。
そして本人確認(氏名、生年月日)と手術の目的確認が行われました。
そして、麻酔科の先生と1ヶ月休みがあったらどこに行きたい?モルディブ?いいねぇ!と世間話。
「気持ちが落ち着く薬をいれます」と言われ、頭がぼんやりして眠りにつきました。
見事な話術でした。
この間に、膣にバルーンを入れ通り道を作った後、手術が行われたようです。説明では手術自体は15〜20分で終わるよと事前に言われていました。
日本ではこのバルーンを入れるのは覚醒下に行う場合が多いそうです。
その時に痛みを伴うと聞いていたのですが、
アメリカでは眠っているうちに終わってよかったです。
AM 9:30ごろ <リカバリールーム>
ぼんやりと目が醒めると、リカバリールームに寝ていました。
看護師さんに気分はどうかと聞かれ、悪く無いよと答えました。
少しして、もう一つのリカバリールームに移動。
車椅子に乗ってといわれ、別室へ。
そちらでは紅茶とクラッカーをもらいました。
今日の手術は胎嚢も胎児も全て取り切り成功したことを伝えられました。
また今後2週間は出血と少しの痛みがあるがそれは正常なこと
抗生物質を3日間必ず飲むことを指導されました。
術後2週間の禁止事項(バスタブへの入浴、プール、膣内清掃、タンポン、性交渉等)
や気を付けるポイントを紙面を使って説明してもらいました。
AM 10:30ごろ<帰路>
全て終わってから着替えをし、夫が待つ待合室まで見送ってもらいました。
この時には不思議とつわりもなくなっており、気持ち前向きに帰路につきました。
なお、この日は生理2日目くらいの出血が続きました。時折血の塊も出てきて、腹痛がありました。
処方されたイブプロフェンを飲み、午後もずっと寝てすごしました。
時系列④【術後数日】
術後1週間
私の場合は生理のような出血が1週間程度続きました。痛みもあったので、胃薬と一緒にイブプロフェンを飲み、やり過ごしていました。
術後4日目にはそれまでより多い出血。
立っていられないほどの突然の腹痛が起こり少し驚きました。
調べてみると、術後3〜4日では子宮が収縮する関係で
出血が鮮血になることがあるらしいです。
おそらくそれに該当するのかなと思い、自宅で安静にして過ごしました。
受診目安(数時間でナプキンを2〜3回替える)までの出血ではなかったです。
術後2週間
フォローアップの受診を行いました。
出血はどの程度だったか、抗菌剤は飲み切ったかなどを聞かれました。
もし妊娠を望むならば、2〜3週間以内におそらく生理がくるから
妊活はそれ以降にするようにと言われました。
以前の指導では3ヶ月は空けましょうと言われていたそうですが
最新の臨床研究では妊娠期間を遅くしても
医学的なメリットは無いと結論づけられたそうです。
さいごに
この記事では私がアメリカで受けた流産の手術の体験談をご紹介いたしました。
どんなに時間が経っても流産はとても悲しい出来事に変わりはありません。
しかし、この体験でポジティブな感情も生まれました。
それは家族の絆を強く感じ、友人の優しさに触れたこと。
この経験を人生の糧にしていけるよう、今は前向きに思っています。
稚拙な体験談ですが、
アメリカのどこかで悲しみに押しつぶされそうな誰かに届けばいいなと思います。
参考になるサイト
・アメリカ産婦人学会の早期流産の処置や対応をまとめたサイト(英語)
・流産後の妊活生活などをまとめた記事(英語)
・日本産婦人科学会のサイト「流産の診断方法」(日本語)